TKA前の関節内注射はやめましょう

3ヶ月以内に人工膝関節置換術を予定する患者さんへの関節内注射はやめましょう!という話。

勝手に背景

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすりへってしまう疾患です。軟骨がすりへり骨が変形して、痛くなったり膝が曲がらなくなったりします。

治療として、筋トレ指導したり、鎮痛剤などを処方したり、足底板をいれたり、関節内にステロイドやヒアルロン酸の注射をしたりして症状を緩和させる治療があります。それでも満足いく症状緩和が得られず困っている場合には人工関節にいれかえる人工膝関節置換術が勧められます。

手術手技の確立、成績の安定、患者数の増加を背景に人工膝関節置換術(TKA: total knee arthroplasty)は年々増加しています。いまでは国内で年間8万件を超えています。

引用:関節ライフ より (株)矢野経済研究所「2011年版メディカルバイオニクス(人工臓器)市場の中期予測と参入企業の徹底分析」をもとに「人工関節ライフ」が作成

 

 ところで、整形外科クリニックには膝へのヒアルロン酸注射を求める人々が行列をなしています。その中には近日中に手術予定となった人も含まれているでしょう。今回はそんな人たちに注射していいの?って話。

Comparison of Infection Risk with Corticosteroid or Hyaluronic Acid Injection Prior to Total Knee Arthroplasty 

目的

近年、人工膝関節全置換術の3か月前の関節内注射は、人工関節の感染のリスクを高めること知られています(えっまじ?)。術前にステロイドまたはヒアルロン酸注射を受けた患者を比較して、注射の薬剤によって人工関節周囲感染症のリスクが変わるかを調べました。 

方法

アメリカの民間保険会社のデータベースからデータ抽出しました。術前注射としてステロイドまたはヒアルロン酸をうけたかによってグループ分けしました。両タイプの注射を受けた患者は除外した。アウトカムは人工膝関節全置換術後6か月以内に発生した人工関節周囲感染症とした。人工関節周囲感染症のリスクを、グループ間(注射なし、ステロイド、ヒアルロン酸)で比較した。年齢、性別、併存症で調整した上でロジスティック回帰分析を行った。

結果

研究対象期間中に合計58,337人の患者が人工膝関節全置換術を受けた。合計1,649件の感染(2.83%)があり、そのうち1,052件が注射なし群(発生率、2.74%)だった。人工膝関節全置換術の3ヶ月前に注射を受けた患者の感染率は、ステロイドが3.25%、ヒアルロン酸が4.18%だった。人工膝関節全置換術の3か月以上前に注射した場合のリスクの増加はなかった。ステロイドとヒアルロン酸を直接比較では有意差は見られなかった。

結論

人工膝関節全置換術の3か月前の関節内注射は、ステロイド、ヒアルロン酸ともに、人工関節周囲感染症のリスクを高めた。ステロイドとヒアルロン酸、複数回注射と単回注射との間でリスクに差はなかった。人工膝関節置換術を予定日から3ヶ月以内の方には関節注射はお勧めしません。

感想

人工関節が感染しちゃうとおおごとです。人工関節抜去しなきゃならんし、再置換しても再感染の恐怖と戦わなければならんし、再置換自体も骨が減ってるから一筋縄ではいかないし。とにかく大変です。最悪切断に・・・。

有意差はなかったとはいえヒアルロン酸の感染率の方が高かったことが意外といえば意外でした。日本ではヒアルロン酸注射が盛んです。要注意です。いずれにせよ手術が近づいたら注射してはいけませんね。

ありがちなのは、開業医の外来でヒアルロン酸注射をうけていた患者さんが手術の決断をして手術する施設を受診。手術待ちが1ヶ月以内などトントン拍子に手術がきまって、最後のヒアルロン酸注射から3ヶ月待たずにTKA施行されてしまうパターンでしょうか。

外来の問診票に最後に関節注射をうけた日についての項目を追加する必要がありますね。

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