老人地獄

2017年9月12日

ルポ 老人地獄 (文春新書)

第1章:下層化する老人たち、第2章:カネなし家なし人手なし 八方ふさがりの老人介護、第3章:老人ビジネスに群がる社会福祉法人、第4章:医療・年金制度は崩壊している、第5章:老後の沙汰はカネ次第、でいいのか

煽った不安の先に

本書の基となったのは朝日新聞経済部の連載「報われぬ国 負担増の先に」だそうだ。弱者の声なき声を丁寧に取材しており高齢社会への不安を一杯に感じさせる。医療に携わっていると納得の内容ばかりで膝を打つ。おそらく私の身の回りは困窮までは至らないのではと楽観しているが、気付かぬうちに本書に取り上げられたような救われない人々が増えてくるのだろう。

注意すべきは本書が片手落ちな所だ。丁寧に個々の事例をひろってきて不安を煽っていることは方法論の一つとしてよいだろう。しかし物事にはミクロの視点とマクロの視点が大切だ。介護保険制度で救われない人がいるのは確かであろう(ミクロの視点)。一方で本書では介護保険制度によってコストとベネフィットが如何に変化したかのマクロの評価が物足りない印象。今後の取材に期待したい。本書の問題点については津川友介氏(ハーバード大学医療政策学)のブログが参考になる。

介護保険制度の改善案の案

文句ばっかり言ってもしょうがないので読んで考えたことを。

ケアマネが事業者の「ひもつき」になると介護保険制度が悪用されてしまう心配がある。

ケアマネに支払われる介護報酬は四千数百億円だが、それに対して介護保険全体の支出は十兆円にのぼる。

無駄な介護サービスを減らして、利用者に適切なケアプランを提供すれば介護報酬はかなり減ります。・・・(事業所から)独立したケアマネが増えれば、報酬をある程度引き上げてもおつりが来ます。

本書より引用

本書ではケアマネへの報酬増額を提案しているが、もう一歩踏み込んで包括払いの仕組みを導入できないだろうか。私が考えた仕組みはこうだ。

介護保険利用者に対して要介護度毎に所定のポイントを付与する。ポイントを使って介護サービスを利用しても良いし、ポイントは一定の割合で換金できる。

例えば要介護2には20ポイント付与。1ポイントあたり1万円相当の介護サービスが利用できる。ポイント換金する場合は50%の割合で換金できる。

この制度のメリットは制度を介護サービスを利用しないことにも金銭的メリットが利用者に発生することだ。不要なサービスを利用するくらいならお金をもらった方が助かるので合理的に考えられれば利用しない。10ポイントの使用を控えれば、10万円のサービス料の発生が5万円の負担で抑えられる。ケアマネはその判断に専門的なサポートを提供する。

この仕組みのもう一つのメリットは家族の介護提供者への報酬となりうることだ。介護退職から貧困への転落は容易に起こりうる。少ないかもしれないが介護提供者への助けになるだろう。仕組みは別だがドイツなど身内の介護提供者への現金給付を行っている国もあるようだ。実際の運用をみて換金率を変更することや要介護度毎に変化を付けることも可能だろう。

どうだろうか?

ルポ 老人地獄 (文春新書)

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