トラクターの荷台に乗せられて現場へ向かう。徐々に見えてくる光景。まさか、あれがそうなのか?視界がひらけて絶句する。・・・この荒涼とした景色はなんなんだ。広がる剥き出しの大地。死屍累々と転がるオレンジの球体。そこには収穫に伴う高揚感も生命力の充実も感じられない。ただ緑なく荒れ果てた大地にカボチャが転がっているのだ。
かぼちゃ狩りに行ってみた
友人に誘われてPumpkin pickingにお出かけしてみた。かぼちゃ狩り? 聞いたことのないイベントだけど、Apple pickingがスケールがでかくて楽しかったのでPumpkin pickingもきっと楽しいだろう。イメージとしては芋掘りみたいな緑の草はらに、これまた緑のかぼちゃがキュートに転がっている感じ。ぶどう狩りのように上から垂れてるかぼちゃ狩りを提供しているところも日本にはあるようだが、こちらのスケール感からはそれは考えにくい。やはり地面だろう。
現場に着くと想像を絶する光景が広がっていた。間違えポイントは以下の2点。
- 草が生えてない
- かぼちゃが緑でない
間違えポイントは他にないはずだがとてもこの異景を説明しきれない。カボチャ狩りイベントのために、どこかから大量にカボチャを仕入れて来て、ばら撒いた後のようにしか見えない。いや、それにしてはスケールが大きすぎる。じゃあ、このカボチャはどこから来たの? 草一本生えていない、生命の気配すらない大地にこれだけのカボチャが生えたなんて全く信じられないのだ。
かぼちゃの悲しい末路
よく見ると綺麗な形をしたかぼちゃがない。どれも非対称であったり、一部が欠けていたりと、どこかに問題を抱えていた。そうか、こいつらはエリートじゃないんだ。いわば売れ残りのカボチャたちだ。傷口に塩を塗るように無邪気に息子たちがカボチャを虐めている。違うんだ、違うんだよ、息子たち。こいつらは、そんなにタフな奴じゃないんだ。さらに傷つけるような真似はやめてくれ。(お父さんは買う気は無いよ)。
すでに旅立ったエリート達を追うように、売れ残りの中でも美形のかぼちゃがドナドナされていく。そうかよかったな。お前らも活躍の場が与えられたんだな。ただ行き着く先はやわな現場じゃ無いよ。内臓をくり抜かれ、体に穴を開けられ、中に火を入れられて、照らされるんだ。そしてできた顔の良し悪しで優劣がつけられる。初めからお前らはハンデを背負っているんだよ。
なにか物悲しさを感じていると、大婆様の声が聞こえて来た気がする。そうだ、この景色は大海嘯だ。荒れ果てた大地に絶望と誰も知らない希望を紡ぐ大海嘯。
王蟲の怒りは大地の怒り。あんなものにすがって生きてなんになろう。
かぼちゃが静かに語りかけてくる。