骨転移と整形外科③

2017年9月12日

前々回前回に引き続き

骨転移診療ガイドラインを慎重に読み直してみると48時間について3カ所記載があった。

#1 脊髄麻痺は原則48時間以内の緊急手術、病的骨折も可及的速やかな手術が必要で、麻痺と骨折をいかに回復させるかが手術治療の主眼となるー総説3(整形外科的治療の意義)
#2 発症から48時間以内の治療が望ましいとされているが科学的な裏づけのある値ではなく、48時間以上経過した症例が治療の適応外というわけではない。緊急手術を行った場合も、術後放射線療法が必要であるー総説3(放射線治療の意義)
#3 完全麻痺を呈してから48時間以上経過している場合、予後6ヶ月以内と推定される場合にも基本的に手術療法は推奨されないーClinical Question 6

#3をみるに48時間以上経過した完全麻痺は不可逆変化で戻らないというのが脊椎外科医のコンセンサスなのだろう。とにかく完全麻痺だったら遮二無二手術するべきようですね。果たして日本を含め世界でこのような体制の確立は可能なのだろうか?完全麻痺をきたして48時間以内に腫瘍に造詣のある脊椎外科医のもとに辿り着き手術の手配が整う環境の確立が。

では完全麻痺じゃなかったら?不全麻痺だったらどうなのだろう? やっぱり#1をみるに可及的速やかに手術で除圧してあげたほうが良いようですね。でも48時間以上経過しても手術非適応というわけでもなさそう(そりゃそうだよね)。ついでに見ると#2の書き方を見ると手術は前提のような書き方をしてある。つまり、まずは外科的に除圧。そして放射線治療という順番のようだ。(放射線感受性が非常に高い腫瘍は別)

それはガイドラインが参照する原著からも読み取れる。
Patchell RA, Tibbs PA, Regine WF, et al. Direct decompressive surgical resection in the treatment of spinal cord compression caused by metastatic cancer: a randomised trial. Lancet. 2005 Aug 20-26;366(9486):643-8.

全周性除圧+放射線 vs. 放射線単独 のランダム化比較試験の結果だ。前者が明らかに勝った結果となり早期終了となったようである。手術と放射線をどちらを先行させるかとなると、創が閉じなくなるかもしれないしまずは手術と考えるのが自然な考えなのかな。

ところで除圧って、てっきり椎弓切除の後方除圧でよいのかと思っていたけども、論文のIntroductionから “Laminectomy ~ often does not result in immediate decompression.” って思いっきり書いてあって、脊髄の全周性除圧が成績向上の要点のようですね。ますますハードルが高い。

で、肝心の48時間に関しては、完全麻痺から48時間以上経過していない患者が対象となっているだけで根拠は不明です。やっぱり完全麻痺48時間は不可逆性の麻痺が生じていると考えるというコンセンサスがあるのでしょう。勉強します。

ここまで書いてきて、不全麻痺が不可逆性変化を生じているのかどうかが気になってきた。頸髄症のJOA scoreなどを参考にして胸椎レベルの脊髄圧迫による不全麻痺の不可逆性について誰か検討してくれないかな?と。原発不明癌の脊髄圧迫が初発症状の時に多少の全身検索をする余裕があるのか、全くないのかの判断に使えて有意義だと思うのですよ。

まとめ

身も蓋もないけども骨メタによる脊髄圧迫は急いで手術。特に完全麻痺は48時間以内。以上。

スポンサーリンク