前回に引き続き骨メタの話を続ける。
その骨メタは骨折するの?
この問いに対してはミレルズスコア(Mirels score)が参考になる。
スコア | 1 | 2 | 3 |
部位 | 上肢 | 下肢 | 転子部周囲 |
痛み | Mild | Moderate | Functional |
骨転移型 | 骨形成型 | 混合型 | 骨溶解型 |
サイズ(横径に対する割合) | <1/3 | 1/3 – 2/3 | >2/3 |
合計点 | ≤7 | 8 | 9≤ |
Probability of fracture (6ヶ月) | 5% | 15% | 33% |
推奨治療 | 保存 | dilemma | 内固定 |
Mirels H. Clin Orthop Relat Res. 1989 Dec;(249):256-64.
サイズというのはてっきり周径に対する割合と思っていたけど、レントゲンで見た横径(diameter)に対する割合というのが原法のようですね。1989年提唱のscoring systemなのでCTもそこまで気軽な検査でなかったということでしょうか。6ヶ月以内に骨折を起こしたのはスコア7以上だったそうでスコア9で感度・特異度が一番だったようです。問題はスコア8のdilemmaでしょう。個人的には部位が下肢で痛みがModerateあれば、サイズが≤1/3でも内固定して良さそうな気がします。
予後はどうなのよ?
寿命を迎える2週間前くらいまではADL自立できれいることが望ましいとは言った物の、あまり予後が望めない人に対して手術をしてしまうと、手術侵襲によって寿命を縮めてしまうかもしれない。
実際、「がん末期での手術であることにより、全身性の合併症が1〜2%の患者に認められ」と骨転移診療ガイドラインにある。術後局所合併症も「8〜19%の頻度で報告されている」そうだ。日本のデータベースを用いた最近の報告では、大腿骨病的骨折後30日の死亡率は2.6%で、術後合併症は12.1%だったという報告もある。(Tsuda Y, et al. Ann Surg Oncol. 2016 Mar;23(3):801-10)
というわけで予後予測を行うスコアリングシステムが開発されている。徳橋スコア、冨田スコア、新片桐スコアなどがそれにあたる。いずれも原発巣、内蔵転移の有無、骨転移の数、Performance statusなどを参考にスコア付けをして予後予測を行っている。少し煩雑なので詳細はここでは紹介しない。しかしながら骨転移治療そして原発病変治療の進歩から、スコアリングシステムの内容の見直しの必要性も言われており、総合的に判断する必要がありそうだ。
骨転移の緊急事態って何?
骨転移の関連症状(skeletal related event: SRE)は骨転移痛、病的骨折、脊髄圧迫、高カルシウム血症などがあげられており特に後2者が緊急対応が必要だ。高カルシウム血症はとにかく内科的治療でカルシウム値をさげるしかない。問題は脊髄圧迫だ。ガイドラインには「脊髄麻痺は原則48時間以内の緊急手術」とかいてある一方、「発症から48時間以内の治療開始が望ましいとされているが科学的な裏付けのある値ではなく」とも書いてあり紛らわしい。どうしたものか。
③へつづく