アキレス腱断裂 縫うか?縫わないか?

2017年9月12日

アキレス腱断裂。みなさん、どのように治療していますか?
Bone Joint J 2017;99-B:78–86

早速結論

カナダのオンタリオ州のアキレス腱断裂の発生頻度は、11年間で100,000人年あたり18.0から29.3に増加した。手術率は、アキレス腱断裂100例あたり20.1件から9.2件に減少した。

背景

アキレス腱断裂は成人において最も一般的な腱断裂である。最近の疫学研究でアキレス腱断裂の発生率が有意に増加していることが示された。高齢化とスポーツ活動に参加する高齢者の増加の結果と考えられている。アキレス腱断裂の手術治療が減少していることも示されている。本研究の目的は、カナダ最大の州であるオンタリオ州の11年にわたるアキレス腱断裂の疫学を調査することである。

方法

1300万人の人口を有する対象地域で、2003年1月1日から2013年12月31日のアキレス腱断裂を調べた。主要アウトカムは、アキレス腱断裂の治療のタイプ(手術vs保存)とした。

結果

27607人の患者が解析対象となった。年齢中央値44歳:66.5%(n = 18,364)が男性。年齢中央値は男性は2003年の40歳から2013年の45歳に増加し、女性は2003年の42歳から46歳に増加した。

アキレス腱断裂の発生率は100,000人年あたり24.6件だった。男性は女性より2.1倍大きかった(p <0.001)。30〜39歳の男性での発生率が100,000人年あたり57.0件と最も高かった。 女性では40〜49歳で100,000人年あたり33.2件と最も高かった。

2003年(100,000人年あたり18.0人)と2013年(10万人年当たり29.3人)の間で、アキレス腱断裂の有意な増加が認められた(p <0.001)。

手術率はアキレス腱断裂100例当たり15.5件であった。手術を受けた患者は、保存の患者より有意に若かった(年齢中央値、40歳vs. 45歳; p <0.001)。手術率が高いのは、男性、合併症が少ない、高所得、都市近郊在住の患者であった。アキレス腱断裂100例あたりの手術率は、2003年の20.1件から2013年には9.2件に減少した。 20歳未満の患者は試験期間中に手術率がわずかに増加した。

考察

アキレス腱断裂発生率の有意な増加があり、手術率の低下を同時に認めた。これまでの報告と矛盾しない。高齢者の発生率の上昇が全体の発生率の増加の原因と考えられる。高血圧、糖尿病、肥満などの慢性疾患がアキレス腱断裂と関連があることが示されており、高齢群における発症率の潜在的な原因として考えられる。

調査期間中の手術率は、約54%減少した。他の地域でも同様の結果が報告されている。手術療法と保存療法を比較したいくつかのRCTの発表と一致して低下しているようだ。これらのRCTでは、保存療法は創傷関連の合併症のリスクを伴わずに手術療法と再断裂率は同等であった。

20歳未満の患者は、研究期間中に手術率が29%増加した。前述のRCTの平均年齢は40歳であり、若い集団に一般化できない可能性がある。手術療法でが筋力の早期改善が言われており若い患者の治療選択のより大きな決定要因となる可能性がある。

米国の12,570人の患者を対象とした最近の調査によると、むしろ手術を受ける可能性が1.5倍高いことがわかった。さらに、 2007年から2011年の間に外科的修復を受けたアキレス腱断裂の割合がおよそ4%増加したことが示された。手術療法が依然として米国では好まれていることを示す。

あかかぶ君の浅漬け

アキレス腱断裂に対してまだ手術やってるの? 専門医試験の面接では自分が前もって提出した症例について質疑がある。その質疑で投げかけられた質問だ。面接官が面接のための質問として投げかけたのか、実臨床でもそのように考えているのかは不明だ。ただ手術の方が回復が早い(本当か?)、再断裂率については変わらないことは知っていることを答えた。

日本でのアキレス腱断裂治療はどうなっているだろうか? 最近、整形外科関連でも天下の東大様からDPCデータを利用した疫学研究?が出ているのをチラホラみかける。あれは東大だから出来るのではなくノウハウを知っているから出来ているのだろう。本研究と同様に日本のアキレス腱断裂についても調査してみたいものだ。地方色が結構出るのではないかと思っている。

実際に臨床医が治療を選ぶ時にどう判断しているか?それは自分の自信のある治療だろう。私自身は手術療法が優勢な施設で教育を受けたこともあり、アキレス腱断裂の保存療法を実施した経験がない時には、患者説明で手術療法推しで説明していたように思う。今だったらどうするか? 専門職として推奨する治療を提示しないかと怒られそうだが、ことアキレス腱断裂においてはInformed choice支援に回りそうだ。

ちなみにアキレス腱断裂手術の点数は8,710点。私の提供する保存療法ではギプスは巻き直し含めて最低2回巻くので、四肢ギプス包帯1,200点x2の2,400点。実際には麻酔料や人件費、材料費などを考慮して計算しないと比較は出来ないのですが参考までに。

最後に臨床に戻って驚いたこと。JBJS (Br) がBone & Joint Journal という名前になっていたこと。

The epidemiology and trends in managementof acute Achilles tendon ruptures in Ontario, Canada A POPULATION-BASED STUDY OF 27 607 PATIENTS
Bone Joint J 2017;99-B:78–86

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