遺書かいてみた?

*遺書と遺言書は違います

あたし遺書かいたほうがええやろか?

たいそう不安の強い患者さんがいた。どうやら40年前くらいの若い時分に大手術を行なって半年間ベッド上で寝たきりだったそうな。その時の辛い思い出からか生来のキャラクターかどうかは知らない。とにかく不安の強い人だった。
残念なことに骨折をして手術が必要になった。手術のリスクを一通り説明して待機中のこと。回診に行くたびに不安な気持ちを元気に吐露される。

「先生、あたし窓から飛び降りたいよ。」
それは困ります。
「寝たきりになってしまうの?」
翌日から歩いてもらいます。
「よっ翌日から歩かせるの?本気で言ってるの?」
はい。その予定です。

回診のたびに同じやり取りを何度も繰り返しているいるので、あちらもわかって聞いているのだろう。こちらも毎回同じ返事を繰り返す。ある日こんな質問が来た。

「先生、遺書かいたほうがええやろか?」

おお、そうきたか。70歳すぎた患者さんだ。いくら元気一杯とはいえ、いつ何が起きるかわからない。たいていのヒトは祝福とともに生まれ勝手に死ぬ。準備万端にしておいても死ぬ瞬間は勝手に死んでしまう。一般的には書いていたほうがいいよなー。よし

そうですね。今回の手術でそういうことを考えているわけではありませんが、一般的に言って書いておくことはいいことだと思いますよ。
「えっ、遺書かくほどのことなの!!」
いや、今回の手術に関連してではないです。”い・っ・ぱ・ん・て・き”にです。
「えっ、でも書いたほうがええんやろ!?」
・・・。

案の定やぶ蛇。書かなくていいと言うのは嘘だしな。遺書ね。書いておくにこしたことないと思うんだけどな。。。

自分も書いてみた?

実家に帰るたびに両親に会うのは最後かもしれないなと思うし、もちろん自分もいつ死ぬかわからんよなとは常々思っている(幸い予定はないが)。特に所帯をもってからは自分が死んだら自分だけが管理しているお金のことなど、残された家族がわかるように準備しておかないといけないと思っていた。

良い機会なので口座のリストやそれぞれの暗証番号などを紙に書き出していく。大した資産がないのであっという間に事務作業終了。あそこの山は息子1へ、あそこの土地は息子2へなどと書いてみたいが、全くその必要なし。残念。妻が頑張って働いてくれれば、なんとか子供の成人まで持つんでないかな。きっと。

さて、遺書もついでに書くかいな。。。。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・書けない。

遺書の書き方をGoogle先生に聞いてみると自殺前提の遺書の書き方が検索上位に来て(それはそれで・・・)、ちょっと違うんだよなとクリックする気も起きない。

そもそも家族に手紙を書くなんて習慣がない。遺書だから名文を遺さねばならないという欲もわいてくる。かといってそんな文才もなければ、ありきたりな言葉を長々と書き残すのも恥ずかしい。やはりお金のことだけしっかり伝えたら、あとは勝手に死ぬしかない。

遺書でしか伝えられない気持ちが浮かんで来たら改めて書こう。
人様に気軽に遺書を書くことを勧めるのもやめよう。
あっ、冒頭のエンディングノートは大変良い映画でした。

あとがき:
遺書(note)と遺言書(will)は違うもののようですね。ごめんなさい。遺言書はしっかり残しておきたいものです。