整形外科医があつかう腫瘍の分類

2017年9月12日

田舎の病院で内科をローテートしていた時に、指導医が肺がんのことを説明するのに「おでき」と言っていた。誤解を招きかねないが、それでも「がん」という響きの持つパワーを緩和させる、彼なりの思いやりと後ろめたさの裏返しだったのかもしれない。

整形外科があつかう「こぶ」の分類

「おでき」というと吹き出物な気もする。腫瘍はどちらかといえば「こぶ」が適当かも知れない。さて、こぶは全て腫瘍かというとそうではない。粉瘤などは類上皮嚢腫という如何にも腫瘍っぽい名前がついているが、これは非腫瘍性疾患で腫瘍とは違う。「腫瘍」とは勝手に増殖した細胞の塊のことで、「こぶ(瘤、腫瘤)」とはふくらんでいる部分のこと。腫瘍と腫瘤の関係は大雑把にこんな感じ。

こぶ(腫瘤) 腫瘍
非腫瘍性疾患

さて腫瘍だ。当然、良性と悪性がある。ここで悪性腫瘍について少し整理したい。悪性腫瘍は「がん」と呼ばれる。注意が必要なのは「癌」は正確には「がん」ではない。

がん(悪性腫瘍) 癌(上皮系)
肉腫(間葉系)
血液がん(造血系?)

大腸がんとか胃がんなどのよく聞く「がん」は基本的に「癌」だ。主に整形外科が扱う骨軟部腫瘍の、悪性腫瘍は「がん」であって「癌」でない。「肉腫」である。

じゃあ良性にそれぞれ呼び名はあるの?と考えてみると、良性腫瘍に対して呼び名はなさそうだ。ふと思い出して固形がんでない血液も書いてみたけど、きっとこんな位置づけだろう。

良性 悪性
上皮系 名無し
間葉系 名無し 肉腫
造血系 名無し 血液がん

割り切れない思いもありますよね。

冷静と情熱のあいだがあるように良性と悪性のあいだもある。骨軟部腫瘍では、その名も・・・「中間悪性」。悪性じゃなくて良かったですね、中間悪性です。なんて説明をされた日には、どうリアクションしたらいいか困りそうなものだが、そう分類されているのだからしょうがない。がん保険おりるんですか?などと聞かれたら、保険会社に聞いてみるしかないでしょう。

こぶ治療の歴史

こぶとり爺さんでは鬼にこぶをとってもらうようですが、これは今も変わりません。鬼手仏心の外科医がこぶをとることでしょう。ちなみに、こぶとり爺さんのこぶは、軟性線維腫(soft fibroma)だというのが筆者の見解。
もうちょっと近代になってくると、大村益次郎だったかが花神で腫瘍の治療を披露している。曰く、患者の背中に赤く腫れた腫瘍がある。これをエイやと正中切開し、あとはガーゼを詰めて交換させるという。なんちゅう大雑把なと思うが、これは類上皮嚢腫が感染した状態に違いない。

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