腰痛を認知行動療法アプリで治療する時代へ

腰痛の担当診療科は整形外科

腰痛患者のほとんどは整形外科を受診する。お腹が痛くて整形外科にかかる人はいないだろうし、足が痒くて耳鼻科に受診する人もいないだろう。各専門診療科の棲み分けの話で良い悪いではない。腰が痛くて精神科に受診する人もあまりいないと思う。もちろん代替医療を利用している人が多数いるのは間違いないが話がそれるので深入りしない。

整形外科医は腰痛に対して運動療法やNSAIDsを処方している。ブロック治療を試みるところもあるだろう。しかし、それでも治らない慢性的なしつこい腰痛がある。腰痛治療へ他のアプローチはないのだろうか。

腰痛には認知行動療法が効く

じつは他の治療法がある。それは認知行動療法だ。認知行動療法は腰痛治療のガイドラインでもGrade Aで推奨されている。ここでいうGrade Aとは、「行うように強く推奨する。強い根拠に基づいている。質の高いエビデンスがある」ということだ。

しかし認知行動療法をうけている患者は少ない。原因は明らかで普通の整形外科医は認知行動療法のトレーニングを受ける機会がないため、できないのだ。「認知行動療法?なにそれ?美味しいの?」という人から「認知の歪みを・・・。うん、診療に取り入れてるょ」という人までいるとは思うが、自信を持って認知行動療法を提供できている人は寡聞にしてしらない。

認知行動療法を実施するために心療内科や精神科に紹介するのはハードルが高い。医療側にも患者側にも精神医療に対するstigmaは払拭できていないのが実情だ。紹介する医者は患者が気分を害するのではと心配するし、実際に気分を害する患者もいるだろう。処方薬のように気軽に認知行動療法を提供できるようにできないだろうか。

認知行動療法アプリ

 https://woebot.io

世の中には認知行動療法を提供できるアプリがあるらしい。podcastを聞いていたら紹介されていて興味を持った。Woebotというそれは、スタンフォードで治験をやっており、精神疾患に対する情報提供のみ vs アプリ使用の比較で有意にアプリ使用の効果が高かったというデータがあるそうだ。倫理的な問題で、therapistとアプリの比較はできていない。また残念ながら日本語対応はしていない。しかし、このようなエビデンスのある認知行動療法アプリが腰痛診療に福音をもたらすはずだ。

実は日本でもアプリが処方薬になる時代がきている。2014年に薬事法が改正されて薬機法となった。薬機法ではプログラム・アプリが単体で申請できるようになっている。つまり保険収載されたスマホアプリを医師が処方することは制度上可能なのだ。すでに臨床試験・治験に入っているアプリもある。厚生労働省もわざわざ法改正したくらいで前向きだ。治験の結果が問題なければ承認されることになるだろう。

認知行動療法アプリで腰痛診療

腰痛への認知行動療法アプリは有望だ。まず患者数が多い。腰痛は日本における疾病負荷のトップであり多くの人が困っている。次にクリニック診療と親和性が高い。従来の薬物療法と併用可能なため、特に慢性化した腰痛に対しては全例処方される可能性がある。そしてなによりエビデンスがある。腰痛診療ガイドラインにGrade Aで載っているにもかかわらず提供できていないことは心苦しい。個人的にはオピオイドを処方する前に認知行動療法アプリを処方したい。

留学から帰国しても誰もやってなかったら作っちゃう??