女性は整形外科医としてやっていけるか?

2017年9月12日

課題は3つ

  • 体力あるの?
  • 妊娠するでしょ?
  • 男性医師の方が優秀でしょ?

整形外科の女医の現状

日本人の半数以上が女性なのだから半数が女性医師が全く不思議ではない。(余談だが生産年齢人口は男性が多い (参照1)) 実際ののところ平成26年12月31日現在に置ける全国の届出「医師数」のうち女性は20.4%だ(参照2)。毎年医師国家試験合格者にしめる女性の割合は3割強で推移ししている。

医師国家試験合格者数 総数 男性 女性
H28年 8,630 5,802 (67.2%) 2,828 (32.8%)
H27年 8,258 5,655 (68.5%) 2,603 (31.5%)
H26年 7,820 5,337 (68.2%) 2,483 (31.8%)
テコムのサイトより改変引用

整形外科における女性医師の割合はどれくらいだろう?日本整形外科学会のHPには「成21年現在、現時点での整形外科の女性医師の割合は1割に満たない程度です。」と希望をこめて書いてある(参照3)。実際には5%程度であり、専門医の取得率も男性76%に対して女性は56%と低調だ(参照4)。整形外科においても女性の環境は厳しそうだ。

課題その1:体力

整形外科は体力を使う。とある病院の整形外科の募集要項には「女性は片脚を持ち上げる体力のあるもの」と記載があったという。”女性は”と書かなければ問題はなかったろうに迂闊な表現である。それはさておき、片脚を持ち上げる筋力は必要だ。手術において麻酔で脱力した患者の足を動かしながら操作することは多々あり、持てなかったら話にならない。診察においてもそれくらいの筋力は必要だ。ただ、それだけである。大多数の女性はクリアできるだろう。少数の男性はクリアできないかもしれない。

外科系の激務に耐えられるか? 常々思っていることだが激務にするのはマネジメントが無能だからだ。また施設によって激務具合には差があるし、外科系の診療科が必ずしも激務とは言えない。トップが変われば組織は変わる。この分野の先駆けである旧大阪厚生年金病院の清野佳紀氏がいい例だ。リンク先の記事ではないが、女性だからという理由で部下を指導しない外科部長に対して、指導するか辞職するかを迫ったという話を聞く。組織は頭から腐る。逆もまた真なり。

課題その2:妊娠

妊娠して休まれたら困るじゃないか!というのは組織の話。女性が整形外科医としてやっていけるかとは直接は関係ない。組織としては、これをどうフォローしたものか。組織が大きければ吸収できるだろう。医局人事であれば医局が多少面倒見てくれるかもしれない。皮膚科など多くの女性医師をかかえる医局では、女性が妊娠することは当然のことと捉えられていると聞く。とはいっても中小病院で少ないスタッフが、もしくは唯一の女性医師が妊娠で休業すると本当に困るだろう。しかし本稿は女性医師が整形外科医としてやっていけるかについて考えるので、この問題には深入りしない。

整形外科の骨折手術や各種検査などで放射線被爆が懸念される。妊婦を被爆させていいのか?これも基本的に杞憂だ。まず胎児に形態異常、精神遅滞、流産などが発生するには”しきい線量”があると言われており、これは100mGyあるいはそれ以上とされる。また、がんについても確率上昇は以下の表の通りだ。解釈は人それぞれだろう。法的には電離放射線障害防止規則に妊娠中の女子は内部被曝1mSv、腹部表面2mSvと制限がある。妊娠可能な女子は3ヶ月で5mSvの制限だ。プロテクターの中にフィルムバッジをつけていれば毎月結果が出る。まずそのような値になることはないだろう。ここで注意したいのは被爆は大丈夫だから妊娠中も放射線業務に従事せよというのは話が別である。あくまで”妊娠期間中の胎児線量を1mGy以下に保ち得るという合理的な保障がある場合に限り放射線環境で働いてもよい。” だ (参照5)。

受胎産物の吸収線量(mGy) 子供が奇形を持たない確率(%) 子供ががんにならない確率(%)
0 97 99.7
0.5 97 99.7
1.0 97 99.7
2.5 97 99.7
5 97 99.7
10 97 99.6
50 97 99.4
100 97に近い 99.1
参照5:Pregnancy and Medical Radiation ICRP Publication 84 (japanese)

課題その3:できるの?

最初に断っておくが私個人の意見は勉強した人が出来るようになると思っているので医者としての男女の能力に優劣はないと思っている。それでも女性医師に対する世間の風当たりは強い。特に我々のメインの顧客層である高齢者においてその傾向は未だ残っていると思うことが多々ある。

しかし男性と女性では医師としてどちらが優れているのだろうか?入り口の時点で女性のほうが優秀だ。医師国家試験の合格率は女性の方が高い(下表参照)。一般的に女性の方が真面目と思われる。医療においては真面目に取り組むことが大切で、突拍子もないことをやるのは少数の研究者で良い。医師国家試験合格率の結果からは女性医師の方が優れている可能性がある。

医師国家試験合格率 男性 女性
H28年 90.7% 93.2%
H27年 90.6% 92.6%
H26年 89.7% 92.5%
テコムのサイトより改変引用

そうはいっても業績を上げる著名な医師は男性が多いじゃないか? いやいや著名な人に臨床能力が優れた人が多いかもしれないが、著名でないからといって臨床能力が劣るとは限らない。地上の星は無数に輝いている。役職を担っている女性医師が少なく見えるのは医療業界に限った話ではない。女性管理職が少ないのは日本の課題だろう。業績をあげる人には、A:昼夜を問わず働く人、B:賢くスマートに働く人、C:賢くかつ昼夜を問わず働く人といる。Cには敵わないとしてもBとして活躍できる人財を増やすことが世の幸せに繋がると私は考える。

実際の臨床の結果はどうなのよ?という疑問がわく。衝撃的なことに女性医師の方が、男性医師よりも患者の死亡率、再入院率が低いことが報告された(参照6)。国家試験合格率にもあるようにやはり女性の方が僅差とはいえ優秀なのではないか?男性医師諸氏は胸に手を当て自省すべき点を考え丁寧な診療を心がけるべきであらう。ちなみに外科だから手技の上手い下手があるだろう?と言われそうだが、女性より男性の方が器用だと自信を持って言える人がどれくらいいるのか私は聞いてみたい。

結語

扱い慣れてないからと行って女性医師を毛嫌いするのは時代遅れです。患者サイドとしては担当が女性医師になったらむしろラッキーと思いましょう。

 

参照
1. 人口推計 総務省統計局 (平成28年12月20日公表)
2. 平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況 厚生労働省
3. 整形外科Q&A|公益社団法人 日本整形外科学会
4. 日本医学会分科会における女性医師支援の現況に関する調査報告書
5. Pregnancy and Medical Radiation ICRP Publication 84 (japanese)
6. Tsugawa Y, et al. JAMA Intern Med. 2017:177(2):1-8.