「医療4.0-第4次産業革命時代の医療」を読んだ

医療4.0 (第4次産業革命時代の医療)

どうやら巷では第4次産業革命というものが進んでいるらしい。第1次が蒸気機関、第2次が大量生産、第3次がコンピュータ、第4次がAIとIoTといったところか。

第4次産業革命とは、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT、人工知能、ビッグデータ、ロボティクスなどの新しい科学技術を活用することで、産業構造だけでなく生活や人との関わり方まで含めた事柄が根本的に変わる大変革とされています。
〜本書「はじめに」より〜

ということで御多分に洩れず医療業界にもその波がザップーンと打ち寄せて来ており、「乗るしかない、このビッグウェーブに」とばかりに、白衣を脱ぎ捨てモヒカンになった30名の奇人・変人たちが紹介されている。「あいつら未来に生きてんな」と思わざるを得ない。

AIでディープラーニングというと、CT・MRIなどの画像診断がまずは思い浮かぶ。それが病理診断まで広がって来ている。専門各科の先生方の危機感もひとしおでしょう。放射線科の読影を専門とする友人は、ここ10年が稼ぎ時といって月収200万超えの勢いで前のめりに生きている。病理医の友人は逆に病理診断医療ベンチャーに手を貸している。もっとも仕事を奪われる危機感が強い人もいる。人それぞれだ。

守旧派が勝つ場合ももちろんある。人工知能搭載麻酔器の開発は仕事を奪われると危惧したアメリカの麻酔科医に潰されたと記憶している。日本で開発したらどうだろう。都会の病院じゃいざ知らず、田舎の病院では麻酔の掛け持ちはまだまだ普通だ。むしろ麻酔科医以外が麻酔をかけていることすらある。産業革命は人件費の高騰したイギリスで始まったことを考えると、まだまだ日本の麻酔科医市場は保護規制が(現状でも)強いか。

診察領域でも人工知能はグイグイくる。ウェアラブルデバイスでトレンドを把握できることは結構なことだ。ホルター心電図や脳波計など鬼のような紙束をめくっていた時代が懐かしかろう。アップルさんも時計で不整脈を検知して受診勧奨してたかと思えば、ついに心電図まで時計に搭載しちゃうし。グーグルさんにかかれば完全にいっちゃったアイデアを進めている。網膜画像から心疾患リスクを予想することを可能にしたとか。理解不能です。

閑話休題。本書に登場するいっちゃってる30人はもう少し地に足がついている。2~3年後くらい、いわばオリンピックに生きている感じだ。末尾に「本書は1ヶ月で書き上げました!」と告白してあるが、それくらいのスピード感に住んでいる30人だろう。製品化されているわかりやすいものを本書からチョイと紹介する。それぞれの事例が明日にでも使いたい感じだ。

  • AI問診
    問診を自動化させて外来診療を効率化。医療の言葉に翻訳してカルテに記載までしてくれる機能まである。むしろセルフメディケーションに進んでいく技術に感じる。
  • 超聴診器
    今時の循環器内科医は聴診器なんか持っていない。エコーだ。だって心音聴診するの難しいもん。それを人工知能に聞かせてしまえと。う〜ん慧眼。
  • 治療アプリ
    生活習慣病の治療には伴走者が必要だが医療者は病院にしかいない。スマホに治療アプリをいれて伴走者になってもらいましょう。というアイデア。エビデンス確立して保険収載を目指す。ライザップがやってることをアプリにやってもらう感じかな。
  • Tele-ICU
    D to Dの遠隔医療でICUをサポート。そのうちコントロールセンターから全国のICUを管理するとか。エレベーターか!と言いたくなるが現実化するかも。

その他の人たちも普通とちょっと異なる視点から医療を捉え直して未来に生きている感じが俯瞰できるダイジェスト版的な良書。高齢化の進行で社会保障制度の限界からくる悲惨な医療の未来しか思い浮かばない私にも「おらワクワクしてきたぞ」と感じさせる力がある。

医療4.0 (第4次産業革命時代の医療)