骨髄点滴 iMAP による深部感染制圧!!

刺激的なタイトルにモノ好きな心を完全に奪われて参加した勉強会での話。骨髄針を病巣に留置して抗菌薬を投与するですと?めっちゃ効きそうじゃないですか。

思い出

一年目の時に脛骨遠位骨幹部骨折に対して内側からロッキングプレートをあてた。常にタバコ臭い、知らないブランドのジャージにキティちゃんのサンダルを着用する茶髪のお姉ちゃんだった。術後も局所の発赤・熱感・疼痛がなんか続くよなと思っていた。結局、遠位部で創離解して内部から膿が流出してきた。川嶌式の灌流をやったり、イリザロフを導入したりと治療に難渋した苦い経験がある。感染は本当に恐ろしい。(フィクションです。)

ナースフルより引用

骨折部の感染は難しい

骨折部の固定のためには人工物で固定が必要だ。プレートなり髄内釘などで固定している。しかし、ひとたび感染してしまうと人工物には血流がないうえ、バイオフィルムを形成して抗菌薬が届かない。感染が難治化する原因だ。感染の治療として人工物を抜去、血流のない組織を掻爬し抗菌薬を点滴投与する。骨折部は不安定となるが感染を沈静化させるために仕方ない。骨折部の安定のため創外固定を用いることもありだろう。感染は予防が一番なのは当然であるが、開放骨折などが原因で感染が起きてしまうことは残念ながらある。制圧するか武器が必要だ。やはり武器は抗菌薬だ。

PK/PD

Player killerでもpenalty kickでもない。もちろんprogressive diseaseでもprogrammed deathでもない。今も流行っているかは知らないが研修医が必ずどこかで目にする抗菌薬使用のキーワードだ。整形外科医が日頃お世話になる多くの抗菌薬は時間依存性だ。つまり有効血中濃度以上をなるだけキープしましょうという薬。別に濃度を高くしたからといって効果があがるかはなんとも…という理解。対して濃度依存性の抗菌薬もある。代表格はやっぱりクラビットだろう。クラビット2x処方の時代に、1x処方すると疑義照会の電話がよくかかってきていた。いいんです。と言って悦にひたっていた恥ずかしい時代を思い出す。

バイオフィルムを形成した細菌を殺すにはMBEC(minimum biofilm eradication concentration、エムベック?)が必要。MBECはMICの1,000倍必要となることもあるそうだ。点滴投与でそんな濃度を与えてしまったら全身的な副作用のリスクが許容できない。そもそも腎臓がもちませんわ。じゃあ局所投与だったら???

Cook Japan HPより引用

iMAP: intra-medullary antibiotics perfusion

そこでiMAP。なんでも”i”をつければ良いってもんではないとは思うが、骨髄針で経骨髄的に濃度依存性の抗菌薬を感染した骨折部に届け、骨折部から漏れ出た抗菌薬をドレナージして回収することで全身的な副作用を回避する。全く思いつきもしなかった。

講演では骨折後の感染をインプラント抜去せずに治療している数多くの症例が提示された。正直、面食らう。正気の沙汰と思えず、俄かには信じ難い。すぐに導入しようとはなかなか思えないが、ロジックは成り立つ。ドレーンおよび血中の抗菌薬濃度をモニタリングした結果では、血中濃度を抑えつつ局所にアンビリーバボーな高濃度が達成できている。これはバイオフィルムも突破できそうだ。

骨髄点滴自体は別に新鮮な方法ではない。私でも知識としては知っている。血管と同じと考えていいですよーと、はるか昔にJATECの講習で教えてもらったような気がする。血管と同じだから結局一緒でしょ。大量に投与できないでしょ。なんて思考停止しなかったことが素晴らしい。

イソジン・ガーゼの時代が終焉したように川嶌式の時代がそっと幕を下ろそうとしている。

改訂が進んでますね。医局に一冊。