落日燃ゆ 広田弘毅

2016年2月7日

落日燃ゆ (新潮文庫)

東京裁判で絞首刑となった唯一の文官らしい、広田弘毅の生涯を通じて大東亜戦争にはまっていく日本を振り返る。いけいけどんどんな時代の空気をどうしたもんかなーという気持ちにさせる。

(満州)事変を現地で見てきた内田は、関東軍の独立工作がもはや後戻りできぬ勢いに在ることを知り、むしろ満州国を承認して、現地の空気を一応平静にし、軍をして満州の建設に没頭させることが、これ以上の戦火の拡大を防ぎ、事態の解決に役立つという判断をした。・・・これによって関東軍の本庄司令官は爵位を与えられ、板垣、石原らの参謀連は軍中央の要職に栄転した。逆に、林、森島、石射らの(軍の動き中止させようとした)総領事たちは満州から追い出された。

(筆者補足)

身内がやっちまった不祥事に対して、早期収拾をはかるのはわかる。でも、その後の人事はどうよ?って話。不祥事をおこした者を昇進させて、不祥事をとめようとした者を左遷させてしまったら、伝わメッセージは「ガンガンいこうぜ!」になるのは当たり前。この後も同様の事案を関東軍が狙って行くのも無理は無い。

ジーンが「シャア少佐だって・・・戦場の戦いで勝って出世したんだ」というのも同様の事案で、いかに業績が高かったとしても命令違反の業績の評価は難しい。赤い彗星は左遷されるべきだったが、過去の栄光に支えられて負け続けているシャアを、ことあるごとに重用してしまったことがザビ家のミスの一つ。

しかしまあ、軍部の粛正が行われたとしても、国外からはどう見ても侵略国家日本とうつっただろうし、軍部の粛正が行われればクーデター待った無し。天皇陛下も暗殺されてしまうこともあっただろう。こうなる前にコミュニケーションがしっかりとれておくことが肝要ですな。

覚悟はしていたものの、被告達に心外であったのは、「共同謀議」の罪である。

「日本が買いかぶられた」と、怒るより苦笑する被告もあった。

ナチス・ドイツの場合は、たしかに統一された国家意思と機構があり、共同謀議の形で戦争やユダヤ人殺害が進められた。だが、それに比べて、日本の場合は・・・。統帥権独立の名の下に、軍部は独走し、外交や行政はふり廻され、あるいは、はねとばされた。また同じ軍部内でも、陸軍と海軍は対立し、さらに、陸軍内でも、参謀本部と陸軍省が対立していた。

東京裁判の検事さんたちは、本当に日本が「共同謀議」したと思っていたのか、それとも「YOU、やっちゃいなよ」的に創作したのか?事後法の出来レース裁判とはいえ文化の違う人達を評価する苦労は心中察するにあまり在ります。

日本の強みは現場の力によると良く聞くが、関東軍の行動はまさに現場の判断と言えないだろうか。戦後は現場から官僚に力が移り護送船団方式で闘ってきた日本が、失われし20年を経験して現場の力を再評価するため地上の星を探し始めたのが21世紀はじめのこと。極端はいかんですよ極端は。でも極端が面白いのだけど。落日萌え。

落日燃ゆ (新潮文庫)