調剤薬局が水素水を売ることは罪なのか?

2017年9月12日

とある内科医のO先生と雑談をしていた時に議論になった。O先生曰く「このまえ調剤薬局に言ったらカウンターに水素水の広告おいてあったんよ。どう思う?」と義憤にかられてらっしゃる。あまり深く考えずに「まあいんじゃないですか?」と返答した。ディベートではないが否定した方が話が盛り上がって面白かろう。「調剤薬局という国家資格保有者の勤める施設で、効果の定かでない(むしろ胡散臭い)商品を売って良いのか?処方薬と同じ土俵に乗せて販売して良いのか?」と怒っている。まあ尤もな話ではある。

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簡単に引き下がっても面白くないので食い下がってみる。
ー私「害がないならそれでもいいのでは・・・」
O先生「効果がないものに頼ることで適切な治療がうけられなかったらどうするんですか!」
ー私「効果がないとわかれば止めればいいじゃない」
O先生「効果のないことをやってる間に、治療が遅れることで命に関わったらどうするの?アガリスクとかの怪しい商売で、死期を早めてしまう人がどれだけいると。」
ー私「がんは違いますよ。別に水素水もがんを治すと言っている訳ではないし。」
O先生「じゃあ血圧コントロールが悪いことで脳卒中になる人が増えても良いんですね」
ー私「効果がなければ止めれば良いじゃないですか」
と再度主張するも結構な剣幕で発言されはじめたのでこの辺で引き下がる。

なんで否定しないの?

なぜ全く信じていない水素水に対して擁護気味に食い下がったか。それは痛みに対するアプローチはいまだ多彩であることを認めざるを得ないからだ。

整形外科医として外来をやっていたら「サプリは飲んでいいですか?」「効果ありますか?」と聞かれることがままある。FDAだかなんだかは、医者は勧めてはいけないとしているとどこかに書いてあったようにも思うので「髪の毛食べたら髪が生えてくると思いますか?」などと話している。

サプリを飲んで効果絶大で喜んでいる人に対しては無下に否定する訳にも行かず、「よかったですね〜」とにこやかにかえす。外傷後の慢性的な疼痛が某有名温泉の泥湯につかったら完全に良くなった人を経験したこともある。

プラセボよと一笑に付されそうであるが、プラセボだろうがなんだろうが効果があれば良いのである。もっと積極的にプラセボを活用してもよいのではないか。プラセボの凄い所は副作用が皆無であるにもかかわらず効果がでるところだ。

「病は気から」を科学する

「病は気から」を科学するという本を読んだ。プラセボ効果を活用する事例、プラセボによって免疫系への影響を明らかにした事例、催眠術の医学への応用、バーチャルリアリティーと鎮痛の関係、そのほか所謂近代西洋医学的手法から離れた代替医療の話が数多く紹介されており興味深い。

「強い効き目のある薬」という印象をもたせさえすれば、より多くの人により強い効果を生み出すことが分かっている。たとえばサイズが大きければ、小さなものより効果が高くなる。一回分が二錠なら・・・、色つきの錠剤は白い錠剤より・・・。一般的には、手術は注射より、注射はカプセルより、カプセルは錠剤より効果が高い 「病は気から」を科学するより引用

プラセボにかぎらず実薬を使用する時も心がけ次第では効果を高めることが出来るのではないか。当然ではあるが本書にも釘を刺してあるくだりがある。『いくら治ると信じても、病期の背後にある生理学的な状態を変えることはできない』 そりゃそうだ。適応を判断することが大切なのだ。

調剤薬局が水素水を売ってもいいのか? 私のスタンスは害がなければ良い。水素水飲んでも効果がないと言っている人には止めろともちろん言うし調剤薬局も言うべきだ。しかし効果が出ている人に対してはどうか?手段は目的ではない。処方薬であれプラセボであれ効果があればそれでよいはずだ。

問題は効果を適切にモニタリングできるか否かと考える。一方で、O先生はすでに害を及ぼしているとのスタンス。公衆衛生的にはO先生が正しい。そもそも選択肢がなければ人は誤ることがない。水素水に頼り続けて生活習慣病のコントロール不良が持続するようなこともないはずだ。

医者の良心として「一ヶ月つづけてみて効果がなければ止めましょう」といった所か。

 

追記

国民生活センターの事業者へ行ったアンケート調査には、”水素水の飲用により期待できる効果は、「水分補給」が最も多い回答でした。” と発表されてる。水素水も全く無効という訳ではないようだ。