パンドラの箱は開いた。どう向き合う?

始まりましたね。ビッグデータの保険利用。自動車保険は予想していたけども、やっぱり医療保険にも関わってきましたか。
ビッグデータで保険料や与信枠が個別に変わる:日経ビジネス

個人の行動で保険料が変わる

生命保険大手はビッグデータに基づく保険商品の開発に注力しており、2018年以降、多様な商品が登場しそうだ。 上記記事より引用

体格(BMI)、血圧、尿検査、血液検査などの結果を利用した保険料の算出が始まっている。友人のラガーマンは健康診断の結果に嘆いていた。彼は身長165cm、体重80kgでBMIは30近い。健診会場のお姉さんに、もっと運動して体重を落とすように勧められてしまったそうだ。こんなに運動しているのにまだ足りないなんてヒドいことを言うと笑う彼の体脂肪率はもちろん一桁だ。

さらに保険会社は、歩数、体重、睡眠、食事といった日々のライフログの収集も始めているようで、今後はこれらが保険商品開発に利用されることになるだろう。実際にライフログを取ってみると意外と面白い。保険商品価格が個別化されることで、金銭的動機づけにより健康意識が高まるのは一つの方法としてありだろう。端末装着がちょっと面倒ではあるけれども。

本当に福音なのか?

食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで、糖尿病になって病院に入っているやつの医療費はおれたちが払っている。公平ではない。無性に腹が立つ

某国の首相経験者の発言だ。まあ、それはそうなんですけど生活習慣病は一概に個人の責任だけとは言えないところがある。一般に所得が高い人間の方が健康状態は良い。所得格差が完全に個人の責任だというのも滑稽だ。生活習慣の全てを個人の責任に転嫁してはいけない。

もう一つ格差の話をすれば、格差が大きい社会の住人と格差が少ない社会の住人は、格差が少ない社会の住人の方が寿命が長い。これは高所得層にも言える。いわゆる健康には環境・社会的要因もでかいのだ。

さらに個別化は究極的には遺伝子に関わってくる。当たり前だが疾病には環境要因と遺伝要因がある。遺伝子で全てシロクロつくわけではないし、環境要因・生活習慣だけで全てシロクロつくわけでもない。様々な割合で疾病の発症に両者は関与している。

遺伝子は変えられないから生活習慣を基準に保険を設計するのはありかというと話はそう簡単ではない。例えば健康に好ましいと考えられる運動習慣にも遺伝的素因が影響していることが明らかになってきている。運動の気持ち良さは遺伝子によって決まるというのだ(無論100%ではない)。

優生思想の入り口

個人の性格と遺伝子多型の関与が明らかになってくる中、ビッグデータの収集は間接的に遺伝情報を集めていると言える。直接的な遺伝情報を保険審査に用いることは個人情報保護法から一定の歯止めが効いていると考える。しかし遺伝子情報差別禁止法(GINA)を施行した米国には遅れる。ましてビッグデータを用いた差別についてはどうだろうか? そのような規制は知らない。

個人の同意の元提出する情報だから良いという意見もあるだろう。しかし皆が提出するようになるといずれ必須になるのが必定だ。「もちろん乗るしかない このビッグウェーブに」とは思っているのだが慎重な運用が望まれる。・・・とはいえ個人的には遺伝子多型にビッグデータに基づいた行動療法カウンセリングの流行をキャッチしたい。