Google検索改善による医療系ブログの終焉

Googleのページ評価法変更

2017年12月6日にGoogleが医療や健康に関する評価方法を改善?しました。

この変更は、医療や健康に関する検索結果の改善を意図したもので、例えば医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなります。
Googleウェブマスター向け公式ブログ:医療や健康に関連する検索結果の改善について

Googleの”Don’t be evil”を信頼すれば改善と考えて良いでしょう。閉鎖に追い込まれたWELQを例に出すまでもなくWeb上には玉石混交の医療情報が存在しています。医学的に真偽の怪しい情報がSEO対策が優れているがために検索上位に表示されることは決して好ましくありません。医学のトレーニングを受けてきた僕たちはともかく一般の人には有害なことがあり得るからです。

ただ今回明らかになったのは、Googleの力を持ってしても健康や医療に関する情報を評価できないことです。情報は正しいのか?どれほど重要なのか?誰が専門家なのか?などが判断できないのです。情報の海から必要とされる人に必要な情報を届けられる力が医療人には求められています。

エビデンスレベル

医学的根拠の強さの程度にはエビデンスレベルと呼ばれる指標があります。下記は「診療ガイドライン作成の手引き2014」にあると国立がん研究センターのHPに紹介してある1例です。レベルIが価値が高く下に行くにつれて価値が低くなります。
(ガイドライン中に見つけられなかったので回りくどい言い方となっています。)

レベル 内容
I システマティック・レビュー/RCTのメタアナリシス
II 1つ以上のランダム化比較試験による
III 非ランダム化比較試験による
IVa 分析疫学的研究(コホート研究)
IVb 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
V 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
VI 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

多少なりとも医学をかじった人は、必ずこのエビデンスレベルを意識しながら記事を書いています。個人の体験談、闘病ブログはレベルVと言えないこともないので有害無益ではありません。しかしエビデンスを意識しながら書いたと推測される記事より評価を下げようとしたのがGoogleの決断のようです。

個人ブログの悲哀

評価法の変更により大きな影響を受けたのが個人運営のブログです。個人の体験談、闘病ブログの評価が下がったことと同様に、小さいクリニックの情報発信や、在野の専門家の情報発信が評価を下げているようです。つまり大病院や大企業などの権威優遇となっています。

個人の体験談に医学的価値がないかというと決してそんなことはありません。患者会に出席する勇気のわかない方へのピアサポートになっている可能性は十分にあります。著名人の闘病録など本人が発信する限りにおいては意義深いものだと感じています。

また大病院や大企業の名義で発信していないからといって、専門性に劣ることの証明にはなりません。概して大病院や大企業は小回りがきかないことが多く、必ずしもニーズをくんだ情報発信をしていないことがあります。しかしGoogleは在野の専門家を見抜けないため権威主義を採用しました。

当ブログへの影響

当ブログは医者っぽいことを書いているブログなので、Googleから専門家と認めて頂けなかったようです。ブログ番付でいう脱ビギナーに指先がかかった程度の拙ブログにも、検索トップ記事が2本ありました。「破傷風トキソイドの使い方」と「開放骨折のGustilo分類」です。この2本の記事のpv数を見るたびに本邦で重傷者が発生していることを感じて切ない思いを抱いていました。

今回のGoogleの評価法変更によりこれらの記事の検索順位に影響が出ました。前者は検索結果2ページ目に後退しました。後者は依然検索トップです。検索結果はpv数にも反映されています。前者のpv数の方が多かったのですが、現在は逆転して後者のpv数の半分程度にまで減少しています。損失を過大評価するのがヒトの性で、一度獲得していたアクセスが減ってしまうと残念な気持ちになってしまいます。

興味深いのは二つの記事の差です。前者は薬の使い方にあたるから順位低下し、後者は専門用語解説なので順位維持できたのでしょうか?エビデンスを気にする零細ブログ管理人としてはNが無いのでなんともわかりません。色々と考えてしまいます。

医療コミュニケーションの両輪

専門家はエビデンスレベルで物事を考えるため統計データのように一般化された情報を信頼します。医学的妥当性に乏しかったり解釈に誤りのあったりする個人の体験談は、情報としての価値は少ないと考えています。エビデンスのあるデータの検索順位が上がることを僕は歓迎します。

一方で個人的な体験談にニーズがあることも確かです。数字に置き換えられた無味乾燥な病気の説明よりも、実際の生の声を聞いて見たいと思ってGoogleに病名を入力する人もいるでしょう。検索結果に生の声が出てこなくなるとwebのもつピアサポート機能が損なわれます。体験談へのアクセスを確保しておく必要があります。

今回のGoogleのアップデートによりSEOが甘いと言われていた大病院や大企業などの情報発信が優遇されることになりました。これらの権威機関にはこれまで以上に患者のニーズを意識した情報発信・工夫が求められます。僕は細々と続けるのみです。